*** みらい芸術館 ***
自動二輪・京都(文・写真/岩本一夫)

川面に映り揺れる花を、じっと見つめる芸妓の黒髪がまぶしい白川の辺り、桂は慎太郎、竜馬と肩を抱き合い、めくるめく新時代の夢を語りながら、千鳥足で歩いたことだろう。
二日後には、一人取り残されるともしらずに…
彼等の行く先は、恋する人の待つ吉田屋。決して誉められる事もなく、常に仲間の裏切りや凶刃におびえる日々、幾松はどれほど桂の心を温めたことか…敵は、本能寺ほど遠く無い。
それにしても、明日をもしれぬ理想化を、身体を張って守り抜く遊女のもの凄さ、妻として、松子として迎え入れる桂の男気。
かつては様々なロマンと涙をつづった祇園。今日はまるで野外セットのように、表と裏を混然とさせながら、女の薫りにむせ返る。
維新の偉業は、若き志士達の功績ではなく、幾松たち、女性がもたらしたものなのかもしれない。戦う男こそ、愛を求めて…

自動二輪・大連(文・写真/岩本一夫)

摩天楼が立ち並ぶ大連。
日本人の街は、廃虚となっても残っていた。母はここを歩いただろうか…。
古屋は次々と崩され、至る所にレンガの山。貧と富が壁一枚隔てて両立する、異様なまでの近代化の疾風。
数年後にはあの時代と別れを告げ、次なるアメリカへ脱皮する中国。緑葉を喰い尽せば、花々の蜜を吸い尽くす蝶への変身が普通だ。
私の母は二十代の頃、女優の仕事で大連に来たという。中国服をまとったモノトーンの写真が一枚だけ残っていた。
始めての大陸に来て、とうに墓に眠っている自分を思ったことがあるだろうか。
私という息子を生み育てる事になるのを、少しは予感しただろうか…
あの頃を探す中、小さく残った中国に出会う。膨張し過ぎる祖国にとまどいながらも、幸せを求め、必死に大切に、今日を生きる兄妹の城…
この家には、テレビも冷蔵庫もいらない。

うつろふ(文・写真/岩本一夫)

あきらかなる…
母と娘が近づいて来る
日本人離れをした背丈
黄金色の髪の毛
ハイカラなワンピース

何かを見つけたのかやおら娘が走り去った

丸髷が不釣合いな程
女の匂いを漂わせながら
赤い毛氈が縁台に座り
月代も青々とした
二本差しの若者との出会いを待つ
顔を赤く染めているのは傘か

確かに見届けた光景は
今朝の事のようである
異国の女を母に持つ娘は
通り過ぎていないのかもしれない
小半時もすれば
小さな大名行列が
目前をかすめるのだろう

桜が散ってしまった砂漠の庭園には
止まってしまった時たちが
楽しげに転がってゆく
秋(文/難波保明 写真/岩本一夫)

あなたの後姿は
もみじに似ている

秋がおとずれると
そんなことをふっとおもう

その涸れた
葉脈
の中からの曲線の呟き

(ぼくは一本の枝のように感じている…)

あなたはあなたの季節に凍え
心は≪死≫の気配をなめらかに滑る

不安とか絶望
とか
中世的な感傷は

季節が秋になった時
すっと
落下するだろう


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