消え行く茅ヶ崎の砂浜
2005年も大きな台風が接近したがm幸い直撃は避けられた。しかし、7月27日の台風7号「バンヤン」は、茅ヶ崎市中海岸、及び柳島海岸の浜辺をさらに大きくえぐった。現在、満潮時の中海岸はコンクリートの護岸壁に波が打ち寄せており、もはや浜辺の面影はない。近々、大型台風が直撃しない保障はない。テトラポットをいとも容易く転がしてしまう、1uあたり7トンと言われる破壊波が、柳島のサイクリングロードはもとより、中海岸護岸壁さえ破壊する日がもうすぐ来るだろう。
〜危険な堤防無き浜辺の復活を求めて〜
■中海岸 侵食対策協議会発足■
神奈川県では、侵食の激しい茅ヶ崎中海岸の保全対策を検討するため、平成11年度から「浜辺づくり懇話会」を、翌年「協議会」を開催、その結論を踏まえ「レンズ礁」という海岸構造物による侵食対策を検討してきた。
2003年9月、県議会本会議で松沢知事は、「岩本議員のご提案のように関係者の方々から直接意見を聞く場を新たに設けたい」と、レンズ礁の再考も視野に入れ、市民の意見を聞きながら中海岸の砂浜確保を考えてゆく姿勢を見せた。
「浜辺づくり協議会」が収束してから6年も経ってしまったが、本年4月2日、ようやく「茅ヶ崎中海岸侵食対策協議会」が発足した。「広く海岸に関係する方々の意見を実施計画に反映させるため」であり、具体的な砂浜保全策を考え出すことが最終目的。今後何百年も先を見越したアイデアを捻出しなければならない訳で、責任は重大だ。メンバーは、日本大学の近藤健雄教授(会長)、(財)土木研究センターの宇多高明先生、神奈川県自然保護協会の廣崎芳次先生、漁業組合、マリンスポーツ連盟、湘南レスキュー、ほのぼの実行委員、サーフィン協会など、茅ヶ崎市の海の状況を充分に理解している市民団体、海洋専門家、行政の代表者だ。この協議会では、中海岸の砂浜の現象につき、次の報告がなされた。
●相模川からの土砂は激減しており、河口砂州は48年間で約300m後退した。●湘南海岸では波の流れによる地盤変動は水深約9mより浅い所で起きている。●ヘッドランド建設前は茅ヶ崎漁港の東側では年間約2万立米の砂が東向きに動いていた。●過去に湘南海岸でなされた浚渫量はおよそ百万立米である。●中海岸では中央部の汀線付近と沖合の水深4〜8m付近が集中的に削られている。●削られた砂の多くがヘッドランド沖に運ばれて堆積しており、この砂の粒径は0.2mm以下の細かい砂分である。●ヘッドランドを越えて東側へ年間約0.5万立米の砂が動いている。
以上のようなことは、本来「浜辺づくり協議会」「同懇話会」の時点で、全委員の基礎的な現況認識として把握されるべきであった。しかし当時の事務局は、調査をしていないのでデータはないとの対応、「さて、何を造りますか?」で、会議は始まった。私は「データも無い中で、素人に砂浜回復案を考えろというのは無謀である。それに、まずは構築物なき海岸保全策を考えるべき」…と譲らなかった。しかし最終的には「反対者が一人居たこと」を明記せよと迫ったにも関わらず、「委員の総意」とし、レンズ礁の実験を開始したのである。問題の根本原因は、自然を無視した構造の「ダム」を造り続けた事である。(当時の県議会では、宮が瀬ダムの建設やその構造に、異論を挟む議員はいなかったのだろう…)砂が流れて来ないのに、人命に危険を及ぼす突堤建設を第一に考えるのはどうしてなのだろうか。(一中下のT.バーでは、既に12名もの尊い人命が奪われている!)しかも、潮流の早い浜に造られた突堤は、流れがすぼまる津波効果と、強いカレントを発生させ、他の砂浜を大きく侵食することも、海を知る者にとっては常識でなのである。(図2)
<神奈川県>新たな養浜対策を開始
県は最近になってようやくレンズ礁一辺倒の方策を切り替え、平成17年度から、(財)土木研究センターとの協働で、「粒径を考慮した養浜」という新たな対策案を検討し始めた。また、レンズ礁と養浜との二つの対策案につき、コンピューターによる予測計算を行い「今後十年間、現状のまま放置した場合の計算をしたところ、中海岸の中央部では浜がさらに無くなる結果がでた。次にレンズ礁と養浜のそれぞれの対策を行った場合の予測計算では、レンズ礁の近くには砂が寄るが、周辺部から砂を引き込むため、周辺の砂浜が減ってしまう。レンズ礁は砂の横流れを止めてしまうので中海岸からの砂の流出が減少し、菱沼海岸の侵食が進む。また、砂の大きさを変えて養浜の予測計算をしたところ、細かい砂を投入すると、十年後には全部が沖合に流出してしまう。一方、粗い砂を投入すると、汀線付近に定着する。このことから、養浜を行う場合、投入する砂の粒の大きさを工夫することが必要と考える。」との結果が発表された。しかしこの結果も、コンピューターや莫大な調査費を浪費するまでもない「常識」である。まあ、「常識」に科学的根拠を与え、国への予算請求の材料にする…と考えれば、少しは我慢できるが…(お国はこのような調査はもちろん、海浜の生態系の調査さえ全く実施して来なかった。海に囲まれた日本であるにも関わらず…だ。国会議員は一体何をしているのか!)
私が「ダムを壊せ!」と叫んでからもう20年以上も経つ。当時、茅ヶ崎市議会で砂浜の減少に危機感を持っていた議員は1〜2名であった。市議会でサーファーは「サーフィン族」とののしられ、「ほっといても海はある」と考えられていた時代であるから、我々が騒いでも相手にされなかったのである。余談であるが、その少し前、エレキギターを持っていると「不良」と呼ばれた!そんな時代が今は懐かしい!?学童保育にしても、かつて大反対をしていた保守系議員まで「支援」している。 市民運動は、正に世を変え人を変える。ただし、皆の考えが心の底から変わり、新たな文化が生まれるには、もう少し時間を要するのだろう…
<養浜は埋め立てでは無い!>
養浜は埋め立てではなく、「昔の砂浜を取り戻す行為」である事を大前提としなけらばならない。県はこれ迄になく大規模な養浜(砂の投入)を行うとしているが、その効果も未知である。また瓦礫の混ざったもの、腐ったダム湖の埋積砂、砂浜になじまない粒子や生態系を破壊するバクテリアの混入した砂が投入される恐れもあり、きちんとした管理システムが必要だ。ある県議の質問に対し知事は、「ダムからパイプを敷いて砂を海に運ぶなども検討する」などと答え新聞報道された。実は私も大昔に、トラックで運ぶより安く付くと考え、市議会で発言したこともあるが、決してやってはならない自然破壊である事に気付いた。ダム湖にたまっているのは、砂というよりも腐った泥である。砂は長い年月をかけて川を下り、川全体の生態系を守り育てながら海へと流出する。その間に海岸にふさわしい砂へと変身し、茅ヶ崎の地形に合った粒子サイズになったからこそ、美しい茅ヶ崎海岸が形成されたのだ。何十億年もかけて…
ダムの砂を流した黒部川は、海を汚染し大きな問題となっている。
〜解決策は魚道の設置〜
砂浜が無くなったのは、建築ラッシュで川や海の大量の砂をコンクリートに使ってしまった事、ダムが砂を止め、かつ川の流れや早さを人工的に変えてしまったこと、浜辺に、自然に逆らった構造物を作ってしまったことなどが悪循環を繰り返した結果である。しかし、それらを反省もせず、ただ何でもいいから砂を持ってきて埋めりゃいいという発想こそ、さらに自然を敵に回すこととなる。ダムに「魚道」を設置すれば、砂浜と生態系の問題はほぼ解決するのだが…
恥じの上ぬり、屋上屋、こりない奴…こんな批評をあびない「自然と共存」できる妙案が、海で生活し海で楽しむ人々の総意で生まれる事を期待したい。