人の手が入らず、瀕死の丹沢
人工林の末路

〜私達の健康への「深刻な被害」が忍び寄る…〜
■荒廃する丹沢の水源林■
丹沢の総面積は9.5万haで県土の40%を占めている。人口杉林は3万ha、その内およそ5千haの荒廃甚だしい。県が管理する水源林は、藤野町の北、山梨県との境に位置する「牧野地内」にあった。相模湖から車で小一時間、小さな駐車場から数分間林道を歩き、山に入る。10分程行ってから、30度近い傾斜を、細い沢づたいに登る。まさしく山だ。一帯はうっそうと杉が繁り、たま栗やあけびがホッとさせてくれる。杉は枝打ちも間伐もされていない。胸先上がり水無し川を15分の程登る。この間ずっと手入れのされていない林が続く。光が届かず下草のはえていない山は、樹木の根がむき出しになり、強風や積雪があればひとたまりもない状態だ。丹沢の人工林は、ブナやナラは炭に杉や檜は材木に利用されていた。特に敗戦直後は、街の復興のために大量の木が切られた。そこに杉の植樹が施された。人口の杉林は、常に人の手が入らなければ死んでしまう。(自然にバランスがとれている野生の森ではないのだ。)今は、木が売れないため、20〜50年前に植えられた杉が、何の手入れもされずに放置されたいる。下草は、木々の間抜けや枝打ちをしなかったために太陽の光がさえぎられ枯れてしまった。最近は温暖化などで鹿が異常に増え、本来のエサにしているのも原因の一つだ。下草がなくなると、斜面の腐葉土は除々に雨で流れ落ち、木々は根がむき出しとなり、しまいに倒れてしまう。水もろとも流れ出た20センチ〜30センチの厚さ。腐葉土が1センチたい積するのに100年かかると言われており、今、対策を施したとしても、元に戻るには2〜3000年かかる計算だ。南側の急斜面では、根がむき出しになった数十本の杉が倒壊していた。まさに根こそぎ、斜面ごとくずれ落ちていたのだ。こんな事があちこちで起きているという。これを拡大させない為には一刻の有余もない。緊急かつ広域の対応を求めて、山は悲痛な叫び声を上げている。


<神奈川の自然に見る『負の連鎖』>
(1)国内の木材が建築方法の変化による外国産にとって替わられた事、炭を使わなくなった事などにより、人工林が放置されるようになった。
(2)枝打ちや間伐がなされないため日光が閉ざされたこと。鹿や猪が、地球温暖化により冬場での死亡率が低下したことと禁猟などによって生息数を増やし、彼等のエサとなったことなどで下草が壊滅した。
(3)下草がなくなる→雨で腐葉土が流される→根がむき出しになる→木が倒れる→流れ出た腐葉土は腐葉土は川砂と共にダムに埋積する。相模湖では、ダムにたまった土砂を年間45万立方メートル浚渫しているが、新しく流入した土砂を取り除く程度にとどまっている。→ダムの寿命が益々短くなる→土砂がダムでせき止められ、また河口近くの砂も建築材料として堀りつくされており、砂が海に流出しない→海岸からさ砂浜が消え、同時になぎさの生態系を変える。→河口の干潟が減少し、渡り鳥や野鳥もこなくなる。(4)ダムによって魚道が分断され、魚が溯上できなくなり、上流の生態系も破壊される。(5)大量の腐葉土を含んだ泥が湖に流れ込み、湖水を富裕化させ、腐らせ、窒素とリンの多い水へと悪化させ、魚も住めない湖や河川を作り出す。これを水道水として飲むために大量の塩素を投入し、発ガン物質であるトリハロメタンを生成する。そして2万人に一人が発ガンする……。てなことを考えながら、急斜面を昇り降りすると、太陽光が黄金色に差し込む林に出た。枝も落とされ、間伐を終えたばかりの「健康な森」だ。まっすぐに天までのびた杉。そのてっぺんの緑の茂みの向こうに、青空が見える。丹沢の森を元の自然に戻すには一体どれほどの人員と日数と予算を要する事だろう。だが少しづつ、一歩一歩、山の元気を取り戻していかなくてはならない。自然をあるがままの姿に戻すのは、自然を破壊した人間の当然の責務だからだ。健全な姿で甦った水源林から、保全された水が少しづつ流れだし、きれいなせせらぎ、沢を形成してゆくだろう。だが残念ながら、この安全で美味しい水を我々は飲むことができない。湖に流れ込んでしまうからだ。相模湖や津久井湖(特に山梨県)の生活雑排水が流れ込んでいる、。「湖」としては認定されない水質なのだ。湖水に空気を送り込んだり人口棚田を造るなどして改善を試みてはいるものの、浄水場へ送り込まれているのは、未だ悪臭を放つ緑褐色の水である。